疲労の原因
新常識!3種類ある疲労
■疲労3種類(動画)
疲労のメカニズム 活性酸素と疲労
■活性酸素と疲労(動画)
常識の勘違い 乳酸は疲労ではない
●かつて乳酸は疲労物質と考えられてきました。
乳酸は筋肉の中では疲労回復を遅らせ、これが血流に乗って脳に至ると、筋肉の疲労を知らせるシグナルであるとともに脳の疲労物質になると考えられ、やり玉に挙げられていました。しかし、ここ10年ほどで乳酸は疲労原因物質ではないことが判明してきました。脳神経系において、乳酸は神経細胞周辺のグリア細胞によってつくられて神経細胞に供給されることが明らかになっています。神経細胞が急激な活動などで緊急にエネルギーを要するときには、ブドウ糖だけでは間に合わないために、乳酸も使われます。また筋肉においては、乳酸の蓄積において生じる軽度のアシドーシス(酸性化)は筋肉活動の妨げとはならず、むしろ筋肉活動の促進・保護作用を持つことが明らかになっています。 乳酸は確かに激しい筋肉運動により筋肉内や血液中で上昇しますが、その増加は一過性で疲労の時間経過とは合わず、また、疲労の程度にかかわらず血液中で上昇します。さらに、乳酸を動物に投与しても疲労状態を生じさせることができないことも明らかになっています。
クエン酸だけでは本当の疲労還元はできない
●クエン酸の作用
かつては、疲労した筋肉には乳酸が溜まり、それが疲労の原因になると考えられていました。そして、クエン酸には乳酸を排出させる働きがあり、疲労回復を促す…と信じられていました。しなしながら、現在では疲労の原因が乳酸であるという考え方は否定されており、酸化ストレスにより細胞がダメージを受けているという説が有力です。
とはいえ、これによりクエン酸の疲労回復効果までもが否定されたわけではありません。具体的には、疲労によるダメージは「活性酸素による酸化ストレスで細胞がダメージを受け、修復が必要な状態」であると説明されます。このとき、肉体疲労なら筋肉細胞、精神疲労なら神経細胞がダメージを受けていると考えられています。そして、ダメージを受けた細胞を修復するためには、アデノシン三リン酸(ATP)というエネルギー源が必要になります。このATPを産生しているのはATPサイクル(クエン酸回路)という働きですが、このATPサイクルを活性化するのにクエン酸が役立っていると考えられています。以上から、クエン酸は疲労によるダメージを回復すると言われますが、本来の酸化ストレスで細胞のダメージを修復できる作用は期待できません。